キラーアプリ第1話 - 開幕

「突然ですが、アドレス帳の11番目の人を24時間以内に殺して下さい。」
 突然、俺のスマートフォンから明らかに機械で合成されたと判る不気味な声がこだまする。 声は続けて語り出す。
「もし、24時間以内にターゲットを殺せないというのであれば、申し訳ありませんが、あなたがアドレス帳に書かれたお知り合いの方にGPSであなたの居場所をお伝えし、命が狙われることになります。」
「ターゲットの殺害に成功すれば、報酬として1週間誰も、殺し殺されずに済む安息の日々を与えます。」
「ターゲットを殺害したら、アプリで死体の写真を送信して下さい。本人確認が取ることができましたら殺害成功とみなし、あなたは殺害ターゲットから外されます。」
「ちなみに、スマートフォンを捨てたり壊したりしないで下さい。通信が途切れて1時間以上経過した時点で、あなたは優先的に 殺害のターゲットにされます。」
「さて、あなたの記念すべき初のターゲットは『斎藤 信昭』です。今からGPSで居場所をお教えします。」
俺のスマートフォンの地図アプリが起動した。そして、指し示した先は高校のクラスの友人、信昭が済むマンションの位置であった。

「おいおい、新手のウィルスか何かか?気味が悪すぎるな。」
 俺はスマートフォンの画面を見つめながらつぶやいた。よく見ると、「キラー」と書かれた見慣れないアプリがインストールされていた。削除しようとしたが、「このアプリは削除できません。」というダイアログが表示される。
「うわー。これはやられたな。今日はもう遅いし、明日携帯ショップに持って行くか。」
 俺はまどろみの中、夢の世界へと旅だった。
よくは覚えていないが、俺のクラスメイトと仲良くふざけ合っていた。そう、その時は自覚がなかったが、後に俺はもっと鮮明にその光景を刻みつけておけばと後悔する。

 次の日、朝起きると即座に俺は自分の耳と目を疑うことになった。
「あなたのターゲット『斎藤 信昭』は既に殺されてしまいました。今から、『斎藤 信昭』本人であるかを確認して下さい。投票の多い選択肢を選んだ方には『3時間』の追加の安息時間を与えます。」
 あまりに変わり果てた姿であるため、すぐには判らなかった。しかし、間違いなく、信昭の死体の写真がスマートフォンの画面に表示されていたのだ。
 刃物で無残に刺された死体から紅い鮮血がほとばしっていた。まさかとは思うが、複数の人間に命を狙われたのだろうか。そんな想像を俺は巡らせた。無数の切り傷に加え、打撲の後も残っていたからである。
「嘘だろ...信昭?」
 画面には、「本人で間違いない」「本人ではない」の二つの選択肢が表示された。俺は迷わず「本人で間違いない」を選んだ。 そして、間を置かず、スマートフォンから不快な声が漏れる。 「あなたの2番目のターゲットはアドレス帳5番目の...」


「『京村 幸子』です。」


「どうしたの?真人?朝ご飯食べないの?」
 母は心配そうに声をかける。
「いや、食欲がないんだ。」
 俺は力なく答えた。
「どうしたんだ?顔色も悪いし、夕食の後、友人と何かあったのか?」
 父は畳みかけるように俺に尋ねた。
「実は...。」
 俺が答えようとした瞬間、ニュースが流れた。
「スマートフォンにあるアプリが流行しています。このアプリがインストールされると、まず『アドレス帳に載っている人を殺して下さい』などという指示がきます。このアプリは判っているだけで、4000万人の人にインストールされている模様です。」
「4000万人って、人口の3分の1じゃないか!」
 俺は驚愕しつつも、耳を傾ける。
「このアプリに指示されるまま殺人事件が起きるケースが後を絶ちません。殺害の容疑者は一般市民だけでなくプロの犯行と思われるものが混ざっているからです。」
「でも、報道されていると言うことは...。」
 俺は期待して聞いていると。
「残念ながら、現時点では政府も打つ手がありません。政府関係者や警察関係者もアプリのシステムに組み込まれてしまったからです。よって、生き延びたければ、アプリの指示の通りにターゲットを殺害して下さい。また、与野党協議した結果、刑法を改正し、アプリによる殺人を合法化する方向で進める模様です。」
 俺はただただ絶望するより他なかった。政府も打つ手がない?殺人を合法化?
「物騒にもほどがあるニュースだな。今日って4月1日だっけ?」
「あらやだ、今はまだ1月ですよ。」
 父と母はとても信じられない様子でニュースを見ていた。まるで他人事のような態度であった。それからいつもの通り殺人事件の報道が数10件あったが、それ以外は芸能ニュースなどまるでいつもの通りであった。あれ?いつもの通り?...俺、最近世の中がおかしいことに気付いてなかった?
「そういや、真人、お前が持っているのスマホだよな。そのアプリって奴入ってないだろうな。」
「まさか...ははは。入ってるわけ無いじゃないか。」
 俺は本当の事を言えなかった。心配させたくなかったというのもあるが、何よりも、ガラケーの母はともかく、万が一の時は親父も「敵」となりうるからだ。
その時、突然電話が鳴り出した。電話の相手は...

殺害ターゲットにされるまで、残り19時間。